栄養療法を独学で学ぶには、まず本でしょう。
当サイトも含め、ウェブサイトはどうしても断片的な情報にしかなりません。栄養療法で頓挫する方にお会いすると、ウェブの拾い読みだけで解ったような錯覚に陥っている方が多いようです。
きちんと学ぶにはセミナーに参加するのが一番良いのですが、お金もかかるし時間の制約もあります。最近は有料のウェブセミナーもありますが、今一身に入りません。
しかし本であれば、その著者の考えを順序立て効率的に知ることができます。しかもたった¥1,500くらいで!
とは言うものの、栄養はどうしても理論や各論に偏った話になりがちで、そういう本は初心者にはまったくチンプンカンプンなことでしょう。
そこで一般の方のために、栄養の重要性や生活のヒントを解りやすく書いた本を10冊、吉田歯科診療室の受付の本棚にある100冊以上の中から独断で選んでみました。
順番に読んで実行すれば、相当な知識がつくとともに、健康体に近づくあなたが待っている事でしょう。
この年末年始に、どれかお読みになってみてはいかがでしょう?
この10冊でまずはOK!
食べてうつ抜け 奥平智之 著
トップバッターは、Blog:歯界良好でもご紹介した奥平先生が昨年突然出版した本。かなり売れたようでamazonでは部門第一位を獲得したようです。
売れる理由は明快で、当診療室の受付でも売っているから…ではなく、潜在需要が多かったことと、漫画が多くとても読みやすいからです。超重要な話が、スラスラと入って来ます。
うつという病名が付けられた人の中には、かなりの頻度で鉄やタンパク質の欠如により《うつ様症状》が出ている人がいることが解っています。つまり本当の(?)うつではないと。ですから抗うつ剤(ジェイゾロフトとかリスパダールとか)を飲んでも効きません。しかしこの事実は一般にはまったく知れ渡っていません。
実は脳は栄養欠損の影響をもっとも受けやすいので、栄養バランスを改善し脳(感情や思考)にアプローチすることで、全身の症状もよくなります。
この本は女子に多い鉄欠乏のことを「テケジョ」と称し、日本中のテケジョを救うべく書かれています。
まさか栄養不足?という疑問に素直に答える、栄養療法を知るための最初の一冊としてお勧めいたします。
《著者のウェブサイト》
《この本についてさらに詳しく》
栄養で人生は変わる 那須由紀子 著
私の勉強仲間でもある那須由紀子さんが、満を持して今年上梓した本。
入院病棟勤務の管理栄養士として、7,000人以上の患者さんと接して気づいた衝撃的事実、それは食べ物の好き嫌いによって性格や人生が明確に分かれること。そして治療結果も大きく違うこと。
さらに入院患者さんだけでなく、そこで働く医師もまた、偏食のあるなしで病院内での評価も分かれるというお話。これはそのまま、あなたにも当てはまる!
本書には末期医療の現場で露呈する厳しい現実が、たいへん読みやすく書かれています。若い頃からの栄養は、ほんとうに重要です!
ちなみにこの本の校正は、私もお手伝いをしていましたので、読みやすくなっていること請け合いです(笑)。レシピもついたとても実用的な本に仕上がっています。
なおこの本も当診療室の受付で販売しています。
《著者のウェブサイト》
《著者の出演したラジオ番組を聴く》
《この本についてさらに詳しく》
食事でかかる新型栄養失調 小若順一 国光美佳 著
著者は現代食の危険性について、多くの発信をしている方です。
栄養失調とはまた大袈裟な!と思われた方はかなりの認識不足、そう思わせる一冊です。
類似した趣旨の本は多数あるのですが、その中でもこの本が一番分かりやすいかもしれません。
コンビニ弁当や冷凍食品などを丸ごと分析し、メーカーの顔が真っ青に…とにかく事実に基づいたデーター開示が圧巻です。いやぁ、亜鉛やマグネシムは、いったいどこに行っちゃたのでしょう?
世の中便利にはなったかもしれませんが、その反面いったい何を失ったのかがよく解ります。伏せられた現実を知る、栄養療法のモチベーションを保つには、絶好の一冊です。
《著者のウェブサイト》
「ケトン体こそ」人類史上、最強の薬である 宗田哲男 著
体はブドウ糖だけではく、実はケトン体という脂肪を元にした物質もエネルギーとして使うことができます。
ケトン体は医学では危険な物質という認識がありますが、実はそうではなく生体にとってひじょうに重要なエネルギー源です。そのケトン体という言葉を世に知らしめたのが、産婦人科医の宗田先生。
過剰な炭水化物摂取に警鐘を鳴らし、いわゆる糖質制限により妊産婦の糖尿病を劇的に改善させ、安産に導いた実績は素晴らしいの一言。
ただし糖質制限食は対症療法であり甲状腺機能が低下する人もいる(Low T3)ので、私は極端な糖質制限は一年くらいで切り上げて、その間に運動習慣を身につけ筋肉量を上げることが重要と考えています。つまり糖質とケトン体の切り替えがちゃんとできる体質に改善するのが、栄養療法の目的の一つです。
本書にはケトン体の持つ素晴らしい効果が余すことなく書かれており、これを知らずに栄養療法は語れません。特に血糖値管理に腐心している方には、最初に読んでいただきたい本です。
《著者のウェブサイト》
疲労も肥満も「隠れ低血糖」が原因だった 溝口徹 著
栄養療法を日本で一気に普及させた一大立役者こそ、この溝口先生です。
多数の著書がありますが、入手しやすいものの中で初心者が読んで最も分かりやすいのがコレかなと思い、ご紹介いたします。
低血糖とは糖分摂取が少ないのではなく、過剰な糖分を摂り高血糖になり、それを下げるために分泌されるインスリンが過剰に効きすぎた結果おきます。
さらには下がりすぎた血糖値を回復させるために、アドレナリンやコルチゾールが多量に分泌されまた高血糖に…
つまり血糖値の乱高下が繰り返された結果不調が発現するわけです。この本では多くの実例が、改善後のデーターとともに示されています。
本書のタイトルにある「隠れ低血糖」は、実はとても多くの人に当てはまる現象です。特にお昼過ぎに眠くて仕事のパフォーマンスが落ちる人は必見です。その理由は?もちろん本書をお読みください!
《著者のウェブサイト》
世界一やさしい!栄養素図鑑 牧野直子 著
解りにくい栄養素を漫画キャラクターにし、とっつきにくい各論をも面白おかしく解説する一冊。とにかく見ていて楽しい!
ここまで上の本を読まれたかたは、そろそろビタミンやミネラルについて詳しく知りたいと思うのではないでしょうか。そういえば昔々、家庭科で習ったけど、あれはいったい何だったのか、って。
そこでこの本です。栄養系の漫画はけっこうたくさんあるのですが、パラパラ見ても役に立つ編集の小技が光っています。
パンをコーヒーで流し込むような朝食に何の疑問を持たない人にプレゼントしてみてはいかがでしょう。
やはり漫画は日本人に合ってるんだなぁ
新.栄養医学ガイドブック サプリがもたらす健康の回復 柏崎良子 著
栄養療法の全体像を知り、栄養素の各論をじっくり学びたい人に最適な一冊。
著者は日本の栄養療法の黎明期から活躍している医師。2008年の初版で、昨年新版となりました。
高血圧・骨粗鬆症などの病名別に栄養療法の要点も網羅されており、私も事あるごとに読み返している、ひじょうに実用度の高い本です。
今までいろんな人にこの本を勧めてきましたが、最終的に頼りにするのはこの本だと評価されています。
《著者のウェブサイト》
医者が教える あなたのサプリが効かない理由 宮澤賢史 著
栄養療法は、どうも栄養素の各論だけで行われることが多く、サプリメントで不足を補えば解決するという安直なイメージがあるように思います。
必ずしも間違いではありませんが、栄養はただ入れるだけでなく、吸収や利用阻害因子の除去なども徹底的に行わないと、特に日本人の場合は効果の頭打ちが早いと感じています。
そしてそんな悩みにズバリ応えるのがこの本です。はっきり言って、サプリ多すぎだろうと。
私もサプリメント過剰症の人に何人か出会って来ましたが、栄養が足りないのは摂取量が少ないだけではないこと説明すると、みな驚きます。例えばそれは次に説明するカンジダだったり、水銀だったり、遺伝的なものだったりするわけです。
タンパク質が重要だからと、素直に増やしたらかえって悪くなった…というよくある事にも説明がつきます。
著者は私がよく知る先生であり、常に病気の根本原因を追求し、多くの実績を挙げて来た氏ならではのアプローチが網羅されています。その個人差を重視した治療方は、なかなか他の医師には真似できない鋭さがあります。
ある程度栄養療法に詳しいけど、その効果に疑問を持っている方であれば、一番最初に読んでほしい本だと思います。
《著者のウェブサイト》
おなかのカビが病気の原因だった 内山葉子 著
「…が原因だった!」という原因一元論は好きではないのですが、この本は違います。大げさなタイトルで目を引かせようという本が多い中、この本のタイトルは衝撃的であっても嘘ではありません。
日本は湿度が高く、締め切った部屋にいることが多いこともあり、カンジダ(常在菌のカビの一種)の影響をかなり受けやすくなっています。それが腸にも住み着き、実に多くの悪影響を及ぼします。
カビの原因は抗生物質、そして砂糖。便利で楽しくなった現代文明の負の部分がクローズアップされています。
腸のカビは栄養を大きく阻害しますので、日本人は高頻度で対策の適用になります。しかしだからといって、急に除菌したら危ないですからね。ちゃんと準備が必要です。
腸内環境は多くの病気の根本原因になっているだけに、この本は外せませんね。
《著者のウェブサイト》
【図解】脳がよみがえる断食力 山田豊文 著
最後にご紹介するのが、なんと断食の本。栄養の話なのに、なぜに断食?
先ほどから書いているように、栄養療法を実践してつまづくのは、いくらサプリメントで栄養補給しても効果が頭打ちなこと。カンジダや水銀の対策もある程度やってみたが、もっとよくなりたいという方にお勧めする究極の健康法、それが断食(ファスティング)です。
断食といっても多くの考え方があり、もちろん否定論もたくさんあります。
しかし古来より世界中で断食が行われ、大きな効果を上げているのはなぜでしょう?その答えは、2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞した、大隅良典先生のオートファジーにあります。
ここでは詳しくは説明しませんが、細胞は飢餓状態になると飽食時とは異なる動きをします。簡単に言うと、不良在庫のタンパク質を分解して再合成を始め、細胞が修復されるというものです。
本書は断食の脳への効果にスポットを当てていますが、それだけではなく消化管の修復・解毒・脂肪分解・DNA修復など、実に様々な効果が発現します。
断食はある程度体力がないと難しいので、最初は知識のある人のアドバイスの元で行いたいものです。
私も断食を3ヶ月ごとに3~5日間くらいはやってますし、周りにはすごい効果を上げた人がたくさんいます。
実はその一人がウチの歯科衛生士のWDさん。一時期けっこう太ってどうなるのかと思ったのですが、私といっしょに断食を始めたらその後もスルスルと痩せてゆき、半年後には15年前のスリムな体型に戻ったのです。細胞が本来あるべき姿になり、栄養が利用できる状態に戻ったということです。
それを見て驚いた患者さんも断食を始めて効果を挙げるなど、歯科医院としてはちょっと特殊な話で盛り上がったりします。
断食は栄養を体内でちゃんと廻すための古人の叡智です。上の9冊を読んで、ある程度の知識と実践力があるかたには強力にお勧めであり、そのとっかかりに良いのがこの本です。
著者の山田先生は杏林予防医学研究所を主宰し、医師を凌駕する知識と熱い想いで健康情報を発信している方です。栄養療法の仕上げに、ぜひ断食をお勧めいたします。
そうそう、お正月後には最適ですね!
《著者のウェブサイト》
栄養療法にもいろいろな考え方があるのだが
栄養療法の世界にも流派のようなものがあり、例えば糖質制限の賛否で、上記の10冊は相入れない組み合わせもあります。
まだまだ小さな栄養療法の世界ですが、それでも人が何人か集まるとどうしてもそうなってしまうのは、人間の悲しいところではあります。
しかし最も重要な部分は共通しています。それは栄養の重要性と、社会の行く末に疑問を感じ行動していることです。
著者間での考えの相違とは、人は画一的ではなく、遺伝的な個人差もある事に由来します。
しかし遺伝の話にまで踏み込むと非常に難しい話になるので、本項ではあえて触れていません。
もちろん上の10冊以外にも良い本はたくさんあるのですが、今回は初心者向けに解りやすい順序で組み立ててみましたので、同じ趣旨の本はあえて割愛させていただきました。
みなさんもいろいろ読んで、良い本があったらぜひお教えください。また機会があれば、もう10冊ご紹介できればと思います。
さてさて、こんなのを書いていると、私ももう一冊本を出したくなってきました。そのためにも、もっと勉強しなくちゃですね。
買い溜めた本もいっぱいあるし、このお正月には何を読もうかな?