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なぜ栄養が重要なのでしょう?

総タンパクから診る隠れ栄養失調

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「新陳代謝(しんちんたいしゃ)」という言葉を聞いたことがあるでしょう。「新陳」とは「新旧」と同じで意味、「代謝」とは体の中の様々な物を新しいものに入れ替えるための「分解と合成」と考えて良いでしょう。つまり新陳代謝とは「体の旧い部品を、新品に入れ替える化学反応」という事になります。

実は私たちの体の部品は、日々新しいものと入れ替わっています(*注)。食べ物を溶かして分解し、呼吸した酸素を使いながら、生きるために必要な部品やエネルギーを合成しています。これら一連の行程が「新陳代謝」で、生きている限り黙っていても勝手に進んでいきます。だからオナカが空くわけです。

で、今問題になっているのが、この代謝の「質が悪い」とか「不十分」という状態。原因はざっと分けると以下の3つです。

  1. 低栄養____タンパク質・油・ビタミン・鉄や亜鉛などの食事量が少なすぎ
    ・胃腸炎による栄養吸収の障害
    ・加齢による代謝効率の低下
    ・歯の欠損による咀嚼障害=栄養吸収不良
  2. 過剰消費___栄養が過剰に消費され、本来行き渡るべき所に届かない
    ・ストレス・不眠・不適切な運動など
    ・消費ではないが、女性は生理で鉄などが定期的に消失する
  3. 阻害因子___炭水化物・酒・タバコ・食品添加物・水銀、鉛などの悪影響
    ・カンジダ、ピロリ菌感染

個々についてはまた後で記しますが、この3つがそろわなくても、1つでもあれば「隠れ栄養失調」です。代謝を行うのに必要な材料が足りていないので、「疲れやすい・ダルい・治りにくい…」が頻発し、あらゆる治療を難しくします。

なのに当の本人はゴハンは食べているので、まさか「栄養失調」だとは思っていませんし、一般的な検査でもそんな事は言われません。だから「隠れ…」なのです。

だいたいの医療は「患者さんはちゃんとした食事をしており、栄養状態に問題はない」という事が前提で治療が進みます。ですから治療のために積極的に食事指導をしたりサプリメントで栄養補給をすることはほとんどありません。ところが血液検査をするとどうでしょう?

例えばこの方は…


総蛋白(TP)が6.8というのはかなりギリギリ低い、7.4は欲しいところです。また、アルブミン(Alb)は、円滑な代謝を進めるためには4.5以上は欲しいところです。通常の血液検査では、重大な病気があるかどうかを読む事が主体なので、とりあえず基準値内であれば異常とは言われません。

しかしタンパク質の代謝量を考えると、両者とも基準値内に入っているとはいえ、低すぎです。実際この患者さんは麻酔注射の跡が残ったりしやすく、そういえばいつも疲れ気味で風邪もひきやすく、治療が計画通りに進みません。

実は血液検査と同時に一週間分の食事記録もつけて持ってきていただくのですが、それを見ると多くの患者さんはまずタンパク質の摂取量が決定的に少なく、このような結果は容易に予想されます。つまり代謝の質や量が悪いのです。しかし本人はいたって普通だと思っています。

一方この患者さんは誤った食事療法により低栄養となり、糖尿病もあることからインプラントの手術が延期となっている方です。このような状態で手術をすると傷の治りが遅くなり、感染のリスクが高まります。

不利な条件でも注意深い手術をすれば一見うまく行ってるように見えますが、長期的にはインプラント周囲炎を発症する可能性が非常に高くなります。歯科医療は今までこのような眼を持っていませんでした。

ただし総蛋白は脱水や感染で増減しますので、数値だけ見ても一概に評価できるものではありません。また採血する時間や運動後などでも値が変動するので注意が必要です。

また、基準値とはあくまでその検査会社の社員をサンプルとして造られた参考値であり、だれも「正常値」だとは言っていません。もちろん社員の方が選りすぐりの健康人であったとはちょっと考えられず、他の因子も勘案して推察するのが本来の医者の仕事です。基準値に入っているから正常と言うのでは、小学生でもできることですね。

最近「糖質制限」という食事法が、減量や糖尿病治療などに極めて有効であることが知られるようになりました。米・パン・麺・菓子・果物などの「炭水化物」を徹底的に食べず、血糖値の上昇とそれに続くインシュリンの分泌を抑えようというもので、私はこの方法に賛成しています。

しかし炭水化物を摂らない一方、体を造る(代謝に必要な)原材料であるタンパク質と脂質は先行して充分に摂っておく必要があります。ところが単に炭水化物を減らしただけで、原材料を補給しないままという誤った方法を行ったため、かえって体調を悪くした方が多数おられます。

原材料が乏しい状態のままでは炭水化物が活動エネルギーとなっている状態ですので、いきなりその炭水化物をカットすれば確かにフラフラになるでしょう。

すなわち糖質制限を実行する場合は、まず原材料であるタンパク質と脂質を充分摂るようにし、徐々に糖質をカットしてゆく必要があると思います。

実はタンパク質を食べる上限量とは、ぜんぜん解っていません。普通の生活をしている限りは食べ過ぎて異常になる心配はないようですので、肉・魚・卵・豆・チーズなどは、好きなだけ食べて良いというのが最新の見解です(**注)。

ただし食べ物はよく噛んで胃腸が消化しやすい状態で飲み込む必要があるのは、今更申し上げなくても良い常識かもしれません。したがって歯がない事は、そのまま「阻害因子」になります。

*注:歯のエナメル質と象牙質、目の水晶体には代謝はなく、新旧の入れ替わりもありません。つまり一度失うと自然に治ることはありません。ですから虫歯は削り取ったあとに人工物で補う必要があり、水晶体がクモって白内障になると人工の眼内レンズを使用する必要があります。

**注:MECと呼ばれる肉・卵・チーズ(Meet Egg Cheese)を主体に食べましょうという方法があります。解りやすく実行しやすいので、最初は良いと思います。しかしそれだけではビタミンCや食物繊維が摂れませんので、野菜や発酵食品も当然必要です。

吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック 予防と栄養医学療法

ーーー以上は2015年9月20日16:54にBlog:歯界良好に投稿されたものを改変して掲載したものです。

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