8月6日に、富士山頂まで行ってきました。上の写真、赤いウィンドブレーカーを着ているのが私(吉田)でございます。
富士山は小学校4年生の時に家族4人で登ったことがあったので、実に48年ぶりのチャレンジです。
当日は山頂でも暑いくらいの好天に恵まれ、とても良い思い出となりました。詳しいことはすでに【Blog:歯界良好】でお伝えしておりますので、ぜひそちらをご参照ください。
ここでは富士登山用に使ったサプリメントや、登山に必要な栄養アプローチについて書いてみます。これからチャレンジしてみようという方の参考になれば幸いです。
目次
登山の特殊性
小学生の時に登ったことがあるとはいえ、私はまったくの登山初心者。しかも左膝に鵞足炎という爆弾を抱えてのチャレンジ、筋力・精神力などすべてに不安がつきまといます。
登山が他のスポーツ・レジャーと大きく異なるのが、途中棄権できないということです。
集団行動ですから、疲れたとか足が痛いとかいって立ち往生し他の人たちに迷惑をかけるわけには行きません。動けなくなっても、それは自己責任。
また、登山は平時とはまったく異なった環境に突然身を置く事になります。私が子供の頃に感じたのは平衡感覚の違いでした。平地では感じることはありませんが、山は当然斜面です。特に富士山は木々がないので、右を見ても左を見ても斜めです。しかも上に行くほど急になります。景色がイイなと見渡していると、フラついてしまうのです。
登りは体力 下りは集中力
山は下りが危ないというのはよく知られている事、集中力が切れるからです。しかしその集中力も、体力に余裕があって初めて発揮できるもの。
その体力は登りで消費されまくります。ですから、いかに体力に余裕を持って登るかが下山を安全に完結するかの勝負になります。
そのために4月から始めたのがBFR(血流制限)トレーニング。スクワットを中心に足腰を鍛えてきました。その成果はとりあえず出たかな?というところです。
さて登山で消費される体力は、登るエネルギーだけではありません。慣れない服装・変化する気温・風・足場の悪さ、そして紫外線でも消費されます。
予想はしていましたが、標高3000m級ともなると紫外線の影響はかなりあります。すなわち紫外線による活性酸素発生がバカにならないという事です。これは疲労対策の大きなターゲットになります。
山での栄養補給も問題です。登山シーズンの富士山は山小屋が多く、途中で蕎麦とか食べることはできますが、やはり食べずに登り切りたいものです。今回は八合目の山小屋で一泊しての登頂アタックとなり、まだ余裕がありましたが、途中でどのように栄養を入れるかは悩みどころです。何と言っても登山初心者が食材をいっぱい持って登ることは無理があります。
そこで今回使ったのが、バナナ。途中のコンビニで買った3本のバナナが大活躍でした。特に八合目から山頂に向かうのは、まだ山小屋の朝ごはんが出る前の朝5時です。この時に食べたバナナはとても有効だったと思います。ホント買っておいて良かった!
話は前後しますが、山小屋での晩飯はカレーの食べ放題です!
私は5回くらいオカワリしたと思うのですが、こういう時の糖質は超重要です。ウマイ!
しかしこれでは過酷な条件に見合うビタミン・ミネラルの補給はほとんどできません。そこでサプリメントの出番、となるわけです。
富士登山で使ったサプリメント
では、実際登山に持って行ったサプリメントを見て行きましょう。
ビタミンB群
もっとも重要なのは、やはりビタミンB群でしょう。筋肉を動かすのも、脳の集中力を維持するのも、ビタミンB群の役割が大きいです。また疲労回復にも必須です。
登山中は、実はほとんど足元ばかり見て登っています。次にどこに足を置くかを一歩一歩考え続けていなくてはならず、それだけでかなりのビタミンB6を脳内で消費しているはずです。特に瓦礫のような富士山道では顕著です。
下りは集中力の維持が勝負ですから、これにも必須ですね。
BCAA
スポーツをする人に必須なのがBCAA。分岐鎖アミノ酸と言い、バリン・ロイシン・イソロイシンという3種のアミノ酸の事を指します。
BCAAは20種類あるアミノ酸の中でもちょっと特徴的で、代謝経路がショートカットされることもあり、特に筋肉に早く吸収〜利用されます。すなわち筋肉の分解が最小限に抑えられると同時に回復も早いということです。また運動中はエネルギー源としても使われます。
登山中は糖質供給はないので、肝臓での糖新生が活発になるでしょう。しかし糖質は筋肉ではなく赤血球に優先的供給されなくてはなりません。なぜなら高地は酸素が薄く、SPO2(動脈血酸素飽和度)が低下するからです。赤血球の酸素運搬能が落ちれば、筋力・集中力などすべてが低下します。
ということで、筋肉にBCAAを優先的に使ってもらうことで、糖質は赤血球に優先的に使ってもらうことを目的とします。
CoQ10
赤血球を除くすべての細胞にはミトコンドリアがあり、脂質とタンパク質を代謝してアセチルCoAからATPを産生、これをエネルギーとします。ここで言う細胞は筋肉と脳が主体になります。
登山では特にエネルギーの産生を、すなわちミトコンドリアの活性がポイントになります。
しかしいくらビタミンB群があっても、次に紹介するマグネシウムと、このCoQ10がなくてはATPは産生されません。
CoQ10は体内で産生されるのですが、残念ながら加齢とともに量が減る傾向にあり、サプリメントでの供給はたいへん有効であることが解っています。
マグネシウム
マグネシウムも、ミトコンドリア内でのエネルギー産生に欠かせないミネラルです。
現代食はマグネシウム含有量が少ないだけでなく、ストレス・酒・添加物などの影響で抜けるのも早く、慢性的な不足が指摘されています。血液検査でALPが低い人は、亜鉛と共に欠乏が強く疑われるので160以下の人は注意しておきたいものです。
ということで、マグネシウムも使用。登山中はひたすら「俺のミトコンドリア、廻れ〜!」と言い聞かせていました。
ビタミンC
抗酸化は登山中の活性酸素対策に必須と考えています。筆頭は定番のビタミンC、普段の生活からも欠かすことができない、超重要物質ですね。
アスタキサンチン
アスタキサンチンは、鮭や蟹などに含まれるオレンジ色の色素。強力な抗酸化物質であることが知られています。
登山中に発生する多くの活性酸素を、ビタミンCと共に消去します。
その他あってもよいサプリメント
今回実際に持って行ったのは上記の6種でしたが、余裕があれば以下のものがあっても良いでしょう。
ルテイン
高山は紫外線の強度が違います。メガネは絶対にあった方が良いと思います。
それでも目には紫外線が入ってきますが、ルテインは目に集中して取り込まれ、紫外線による活性酸素を消去します。
グルタミン
グルタミンはストレス状態で大量に消費されますので、サプリメントで補給すると良いでしょう。胃腸の修復にも重要です。
総合アミノ酸製剤
BCAAやグルタミンだけではなく、多種のアミノ酸が入った製剤を用いても良いでしょう。
L-カルニチン
L-カルニチンは、脂肪をミトコンドリアに入れエネルギーにするために重要な成分です。主に赤身肉(特に羊)に多く含まれていますが、摂取量は限られますので、サプリメントによる補給が効果的です。
高山病対策
富士山はバスでいきなり五合目まで上がります。初日は八合目まで登るとはいえ、半日で一気に標高3,000mという気圧が低い環境に晒されます。登山慣れしていない人は高山病に注意が必要です。
高山病対策は事前にやっておくことが重要です。すなわち運動・睡眠・栄養をきちんとやる、あたりまでですがこれが重要です。
登山時は、ゆっくり登る。これが基本だそうです。ゆっくり低酸素に慣らすわけです。また適度に糖質を獲り、また糖質代謝にかかせないビタミンB1もサプリメントで補う必要があります。
それから補水をまめにする、これも大切なのだそうです。今回私は500mlのペットボトル3本をちょうど消費しました。水は山小屋でも売ってますが、値段が高いので登山前に買っておきます。
高山病対策にダイアモックスという炭酸脱水酵素阻害薬が有効と聞きますが、ちょっと作用機序がわからないので私は使いませんでした。
結局八合目の山小屋で数時間軽い頭痛がおきてしまいましたが、これは高山病なのか酒のせいなのか(けっこう呑んだ…)は定かではありません。
登山は準備が8割
登山は履き慣れない登山靴を履き、そこそこ重いリュックを背負い、着慣れない服装で動きます。これだけでも相当なストレスです。
そして天候が変わると途中で着替えなくてはなりませんが、たかが着替えといえど意外に体力を消耗します。
また途中で靴紐が解けたりすると、結び直すために手袋を外し、かがんで紐を結ぶ、これもけっこう体力を使います。もちろんそこで集中力が切れます。
さらに靴に石が入ったりすると、出すのはそれはもうたいへん。面倒くさいからといって我慢して歩いていると、もっとひどい事になります。だから靴紐はきちんと結び、下りの須走では靴にカバーをつけ石が入らないようにします。
このような事態を考えるまでもなく、準備や予行演習はとても重要です。おそらく登山は楽しく安全に終えるためには、準備をきちんとやることが8割を占めると思います。
今回トラブルがなかったかといえば、実はピンチが一度ありました。八合目の山小屋で足がつりそうになったのです。マグネシウムを入れていたのに…
ということで、カレーを食べるときは座れず、立って食べながらストレッチをしていました。
幸いつりそうになっただけで、完全につったわけではありませんでしたが、かなりギリギリのところで持ちこたえていました。
今回は体力的にも精神的にも、けっこうギリギリなところで勝負していた感がありましたが、無事山頂まで登り帰ってこれたのは確かにサプリメントがあってこそだったと思います。
もちろんサプリメントは登山の時にだけ使えば良いというものではなく、普段から摂取して体にチャージしておくことが重要です。
そして何よりたいせつなのは、普段の運動・栄養・休養をしっかりやっておく。でないと、登山のような引き返せないシーンでは持ちません。
そう考えると、登山を楽しむ鍵の8割は準備にあるのだなと思うのです。若い人ならともかく、57歳になった私は9割以上を占めるかもしれません。
今回の登頂は天候に恵まれ、雨風や低気温にやられることもなく、そういうストレスは皆無だったわけです。では荒天だったらどうなっていたか、まったく自信がありません。
登山を予定する方は、とにかく準備を徹底されてください。運動・栄養・休養、この3点は不変で最強超重要です。登山中だけサプリメントを使えばOKというわけには行かないことを覚えておいてくださいね。
さて、来年はどうしようかな…