栄養療法を実践している方にとって、ご自身の歯の治療にアマルガムが使われていないかどうかはとても気になる所です。
鏡を覗くと何か金属は入ってるんだけど、よく見えないし、以前どんな治療をされたのなんてわかんないし…
アマルガムの危険性についてよく知っている歯科医師はごくわずか。水銀は代謝にブレーキをかけてしまいますので、安易に削ると大量に吸引してしまい、その後本当に寝込んでしまう人がおられます。
うっかり無防備に削られてしまう前に、メタルインレーとアマルガムの見分け方について、写真を用いて解説します。
目次
これがアマルガムです
とにかく写真をどんどん見て行きましょう。数多く見れば、何となく解るようになってくるかもしれません。
下の奥歯、二本ともアマルガムです。色は濃く、光沢がありません。仕上がりとしては良い方で、境目の適合もよく溝もついています。処置後20年ほど経っていますが、経過が悪いわけではありません。しかし怖いので18年前に撤去して、今は金合金生のインレーに交換してあります。
何でそんなに詳しいのかって?実はこれ、私(吉田)の歯なのです。大学2年生の頃、当時大学院生だった先生の研究用症例になったもので、2時間くらいかけて丁寧に治療してもらったものです。通常このような治療なら、15分くらいで終わらせないと赤字になってしまいます。
丁寧な治療ではありましたが、やはりアマルガムは脆い材料で変質も強く、こんな感じの見た目になってしまいます。
写真下側がアマルガム、上側は金合金製のインレーです。アマルガムの方は破損が激しいことがわかります。インレーの方は潰れて変形していますので、歯軋りが強い人と予想されます。
しかしインレーもオーバーに入っているので、あまり丁寧な治療ではなかったことが伺われます。
写真下が健康保険のインレー(金銀パラジウム合金製)、上がアマルガムです。光沢がなく、ノッペリした感じに見えるのがアマルガムの特徴です。
小規模なアマルガム充填。このような小さなものはだいたいアマルガムです。
ちょっと珍しい、上の糸切り歯裏側のアマルガム充填。黒くイオンが滲み出ているように観察されます。
写真左はメタルインレー、中と右がアマルガムです。アマルガムは歯の面積半分以上を占める用途には不向きです。
下がアマルガム、かなり破損していますね。上はメタルクラウン(冠)、被せ物はアマルガムで造ることはできません。すなわちクラウンであれば、アマルガム製ではないということです。
下に半分だけ写っているのはメタルボンドクラウンと言って、表面に白いセラミクスを貼り付けるもの。もちろんアマルガムではありません。他の3本がアマルガムです。
こちらは2本ともアマルガム。とても簡単は詰め方をされており、材料以上にやり方に問題があり予後不良になっています。
黒ずまないアマルガムもあります。のっぺりした感じであれば、アマルガムの可能性が高いです。
こちらのアマルガムも破損が激しいですね。ただ、ムシ歯のリスクはそれほど高い人ではないと思われます。
これはアマルガム…ではありません。健康保険のパラジウム合金製インレーです。光沢がきちんちある事がポイントです。
だいたいこれだけ黒ずんでるとアマルガムの可能性が高いのですが、以前健康保険で使われていた銀合金製のインレーの可能性もあります。
アマルガムは、このような粗雑な充填(詰め方)をされているケースが多いです。
もう一つ見分け方があるとすると、「歯と歯の間」まで修復してあったら、それはアマルガムではない可能性が高いです。従って、この写真はすべてインレーです。歯と歯の間の修復には隔壁という型枠をはめ込んで治療する必要があるのですが、日本ではコストの関係でまったく普及しなかったからです。
という事は、海外で治療をされてきたかたは、歯と歯の間までアマルガムで修復されている事がけっこうあります。海外は日本と違い、行った医療行為が正当に評価されるために、複雑なアマルガム修復も行われています。
こちらも海外で治療を行って来たアマルガム修復のケース、4本ともです。日本ではまずこのような治療は行われません。
そろそろ見慣れて来ましたでしょうか?ハィ、これもアマルガムです。
上の二枚は同じ歯、大臼歯の側面に小さく充填されていたら、それはアマルガムです。
ちょっと写真が暗いですが、これもアマルガムです。
もう解説はいらないですよね。上の4枚はすべてアマルガムです。
二箇所に分かれていますが、両方ともアマルガムです。
写真下はインレーです。歯と歯の間まで修復されてますよね。写真中と上はアマルガムです。
ちょっと問題なのがコレ。右はインレーですが、左は??? 実は光っている部分がインレーで、黒ずんでいる部分がアマルガムです。おそらく先にインレーがあって、後でアマルガムを行ったのでしょう。
上の前歯の裏側に小さな黒っぽい充填があれば、それはアマルガムです。
これは比較的大型のアマルガム修復。けっこう破損が来てますね。18年前の私の上の奥歯でした(笑)
そろそろインレーとアマルガムの見分けがついて来ましたか?ではこれはいかがでしょう。ちょっと難易度が高いかもしれませんが、写真下がインレー、中と上がアマルガムです。歯と歯の間にアマルガム修復がされているのは、日本では珍しいです。
みんなこれくらい判りやすかったら楽なのですがね。
というわけで、お疲れ様でした!
デンタルミラーに写してスマホで撮ってみよう
以上を参考に、自分の歯にアマルガムがないかを探して見ましょう。下の歯であれば何とか鏡で見えます。スマホのLEDライトで照らして、写真に撮ってもよいでしょう。小さくしか写りませんが、ないよりいいです。
問題は上の歯、これは他人にスマホで撮ってもらいましょう。
どうしても自分で撮りたいという方は、デンタルミラーを一本買ってみましょう。
デンタルミラーに歯を写し自撮りする、ちょっとテクニックが要りますが、ぜひチャレンジしてみましょう!
アマルガムの水銀はエネルギー産生を阻害

TCAサイクル
アマルガムが口の中にあると困る理由、それは溶出した水銀が細胞内でエネルギー産生を阻害することです。
上の図は中学校でも習うTCAサイクル(クエン酸回路・クレブス回路)です。オレンジの文字が反応に必要な栄養素、一方青い文字が反応を阻害する物質です。水銀(Hg)があることで、ATP産生にまでたどり着くことが難しくなります。これが疲労の原因となります。
アマルガムは安定した物質で溶出することはないと思われていますが、実際はそのようなことはなく気化し吸引していることが解っています。
水銀の排出能を知る毛髪ミネラル検査
アマルガムが口の中に無ければ、水銀の問題はクリアされるのでしょうか?実は水銀はアマルガムからだけではなく、魚貝類からの摂取が最も問題になります。
上のグラフは毛髪ミネラル検査の結果です。歯の治療にアマルガムは使われていませんでしたが、水銀の値が高くなっています。
このかたは魚を多く食べるので、素直に魚の水銀が現れていると考えてよいでしょう。
では水銀のグラフが伸びていない人は安心なのでしょうか?その人が魚をまったく食べない人であればそうかもしれません。しかし普通に魚を食べているのにグラフが伸びていない人は要注意です。水銀を排出する能力が落ちている可能性が高く、すでにエネルギー産生が落ちているかもしれないからです。
魚は有益性の高い食品ですからぜひ摂取したいものです。水銀の影響は避けられないですが、体の解毒力を上げて水銀の問題を相殺できるようにしましょう。ですからアマルガムがあるかたは与力が少ないので、信頼できる歯科医院での除去をお勧めしています。
なお厚生労働省は妊娠している方への魚の摂取を制限するよう明確に呼びかけています。以下のファイルをご参照ください。
これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと
表面からは見えない部分に使われることも
アマルガム治療は上記のように表面から見える治療にだけではなく、表面から見えない部分にも使われてきました。例えば、神経をとった歯の内部に芯材として使われたこともありました。
また歯根尖切除した後で、封鎖材として使われたこともあります。上の写真、左から二番目の歯の根の先端に、白く丸く写っているものがあります。これは、まず間違いなくアマルガムで封鎖したものが写っています。
アマルガムは多少の水分に影響されずにしっかり固まることと、硬化するとわずかに膨張するので、封鎖性が良いという理由で使われて来ました。
しかし近年は顕微鏡による精密な治療ができ出血などの水分の影響を排除できることと、MTAという生体親和性が極めて高い材料の出現で、アマルガムを使う理由はどこにも見当たりません。
それからクラウンやインレーを撤去すると、中からアマルガムが出てくることもあります。アマルガムを完全に撤去せず、残ったままクラウンやインレーを入れる事があるからです。これは事前のレントゲン診査で発見することはできません。
アマルガムの撤去は慎重に
2016年4月の診療報酬改定で、アマルガムは健康保険の適用から外れました。すなわちアマルガムはほとんど使われるこはない時代になったということです。新たにアマルガムを使って治療するには自由診療になります。
最近は確かにアマルガムが入っている人を拝見する機会は減りましたが、昔は本当に普通に見かけたものです。上で使った写真は20年くらい前のファイルを中心に探したものですが、32枚の写真はあっという間に揃いました。それほど一般的な治療だったのです。
残念なながら水銀の毒性はほとんど認知されていません。アマルガムを無造作に除去して、誰もが調子が悪くなるわけではなく、私も知識がなかった18年前に8か所のアマルガムをラバーダムも防御もせず撤去しましたが、とりたてて変化を感じたわけではありませんでした。
しかし長期的な代謝低下はかなりあったものと推察されます。たまたま私には水銀の排出能があっただけだったのかもしれません。とにかく除去にあたっては十分な知識と技法を持った歯科医院での撤去を強くお勧めいたします。
なお吉田歯科診療室ではアマルガムの除去は行っておりません。信頼できる提携医院をご紹介しており、撤去後の修復を高い精度で行っています。