毛髪ミネラル検査は髪の毛の根本3cm に在る微量元素を測定することで、直近3カ月程度の以下の項目について調べます。これは血液検査では得ることができない貴重なデーターとして鬱や疲労の検査に応用されていますが、歯科口腔外科でも有益で、私たちは手術前評価やメンテナンスの指標としています。
- 水銀・鉛・カドミウムなどの有害重金属の蓄積量と排泄能力
- 脱灰(骨からカルシウムの溶出)の程度
- マグネシウムとカルシウムのバランス
- ナトリウムとカリウムのバランス
- その他の必須ミネラルの量とバランス
- 副腎疲労の程度
- その他…
重金属
解りやすいのが1の重金属です。これらの蓄積は細胞のミトコンドリア内でエネルギー産生を阻害したり、細胞の分化を妨害します。つまり「疲れやすい」とか「傷の治りが悪い」の元凶で、ビタミンB群のサプリメントを多く摂っているにもかかわらず効果がイマイチという方は、まずこの重金属が毛髪から出てこないかを確認した方が良いでしょう。
ただしこの値は排泄している量や能力を診ていますので、検出されるということは、良好に排泄している証拠とも言えます。重要なのは食事記録や問診などから、重金属が溜まる生活環境かどうかを判断することです。例えば水銀は残念なことに魚に多く含まれる傾向にあります。また歯の詰め物にアマルガムという水銀化合物を使っていると、持続的に水銀を摂取していることになります。また鉛は古い水道管のせいかもしれません。
摂取しているにも関わらず検査で出てこないとすると、排泄能力が落ちていると考えます。この場合は亜鉛を積極的に摂って、メタロチオネインという解毒タンパクを増やしたり、再吸収を防ぐために腸漏れ(リーキーガット)の修復を急ぐ場合もあります。
脱灰
脱灰とは骨からミネラルが溶け出すということで、主にカルシウムのことを指します。カルシウムは非常に重要なミネラルであることは有名ですが、マグネシウムの存在でバランスが取られることはあまり知られていません。カルシウム摂取過剰でマグネシウムとのバランスが崩れたり、摂取不足で根本的に不足すると、細胞内のカルシム濃度の維持が難しくなり、骨を溶かしてまでもバランスを維持しようとします。この現象は見かけ上カルシウムが上がりますので、カルシウムパラドックスと呼ばれています。
毛髪ミネラル検査でカルシウムやマグネシウムが多く出てきた場合は脱灰が起きていると判断し、主にマグネシウムの補給を考えます。マグネシウムは血液検査でも測れますが、生体の恒常性(常に同じ状態を維持しようとするフィードバック機構のようなもの)により細胞内で過不足が生じても血中濃度は一定量に保つよう細かくコントロールされており、あまり異常値は出てこないようです。
マグネシウムは吸収効率の悪いミネラルで、胃腸の調子に左右されます。またストレスで過剰に排出される傾向にあり、亜鉛と並び現代人は不足傾向にあります。経口ではニガリなどもありますが、できれば入浴剤やスポーツ用オイルなどを常用し、小マメな摂取をお勧めします。急ぐ場合は静脈注射で補給することもあります。
注意すること
毛髪ミネラル検査は他にも多くの情報を与えてくれますが、その読み方は複雑です。最低でも問診・食事記録・血液検査などの他のデーターと重ね合わせて診る必要があります。
また検査結果はアーチファクトと呼ばれる誤反応が含まれている可能性があり、それを勘案して診断する必要があります。
重金属が検出された場合は解毒(デトックス)を考えなくてはなりませんが、キレート剤という専用薬をいきなり使うと激しい副作用で、それこそ生活ができなくなります。先に書いたように亜鉛の積極補給と腸管の修復を優先し、専門医の指導のもと少しずつ進めて行く必要があります。
なおこの検査のキットは個人が通販でも入手でき、結果も得ることができます。しかしそれを診断して治療に活かすには、専門知識が必要です。決して自己流の判断はされないよう、ご注意ください。
なお毛髪がない場合は、陰毛や爪でも可能です。ただし陰毛は伸びが遅く、爪は先端しか取れないので、直近3カ月のデーターにはならない事を考慮する必要があります。
参考サイト
ら・べるびい予防医学研究所 http://www.lbv.jp/analysis/hair.html
株式会社デトックス http://www.doctorsdatajapan.com/toxic-essential-elements/Hair_Elements.html