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栄養阻害因子とは?

サプリメントを増やす前に、阻害因子の除去を

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はじめに

サプリメントを摂っていてもどうも効果がイマイチだ、足りないのかな…?誰もが思うところでしょう。

本当に足りないのかもしれませんが、その一方で栄養を阻害する原因がたくさんあることも知っておかなくてはなりません。

前稿では、サプリメントの考え方について書きましたので、ここではサプリメントの効果が頭打ちにならないような、また増量する前に考えておきたい重要項目を整理します。

咀嚼不全

咀嚼(そしゃく)とは、食べ物を噛むことです。噛んで食材をよく潰して唾液と混ぜない事には、続く胃腸での消化吸収がうまく行くはずありません

最近の食材は栄養価が低いのですから、わずかな量を効率よく使うために、最低でも30回、できれば100回の咀嚼を目指したいものです。

ところが今の食材は柔らかく、噛まなくても飲み込めてしまいます。また味も濃いので、回数噛むと塩っぱくてしかたがありません。

早食いの習慣がついてしまっている人・パンをコーヒーで流し込む人はベースが悪いので、いくらサプリメントを入れても改善はあまり見込めません。

それから

  • 歯が欠損していて噛めない
  • 入れ歯が合わなくて痛くて噛めない
  • 歯周病や虫歯で痛くて噛めない

…などなど、とにかくきちんと噛める歯でないことには、栄養療法の入り口でつまずく事になります。咀嚼不全は早急に改善し、良い状態が長く維持できるように専門家の指示を仰ぎましょう。

itaru yoshida
咀嚼の重要性については、また改めて書く事にしましょう。具体的な治療などについては、吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニックのホームページをごらんください。

消化不良

栄養素の吸収は腸で行われますが、その前に胃で消化されなくてはなりません。そのために必要なのが胃酸です。

胃酸はたんぱく質の消化を助けるだけでなく、鉄・亜鉛・マグネシウム・リチウムなどの必須ミネラルをイオン化し、腸で吸収できる状態に変化させる働きもあります。またビタミンB12を活性化する大切な役割もあります。

胃の機能を評価するには、採血をしてペプシノーゲンというものを測ります。これはよく胃癌検診で用いられる検査で、ペプシノーゲン1が胃酸量の評価、ペプシノーゲン2が炎症の評価、1と2の比率を診ることで胃癌の可能性を推計します。

ペプシノーゲン1は70程度が良いとされています。しかし私たちのところで過去3年間で行った検査でそのような方は、病的なもの以外は一人もおられませんでした。9割の方は35くらいで、必要と思われる消化能力の半分しかない計算になります。30以下の方もたくさんおられました。これでは続く小腸での消化吸収もうまく行くはずがありません。

さらには飲み込んで胃に落ちてしまった歯周病原菌などの口の中の細菌を殺菌すことができなくなり、細菌がその先の小腸に定着したり、大腸の良性細菌を破壊し消化不良を助長するなど、一般に考えらている以上の悪影響があります。

したがって、たいした理由もなく胃薬(胃酸抑制剤)を使うことは、大きな健康被害をもたらします。使用にあたっては、栄養療法にも詳しい医療機関に相談するべきでしょう。

サプリメントを有効活用するには、ペプシノーゲンを正常値に近づけなくてはなりません。それには原材料であるタンパク質の摂取量を増やしたいところですが、ただタンパク質をたくさん食べただけでは、そもそも胃酸が出てないために消化不良をおこすだけで解決になりません。まず咀嚼が重要といったのは、そのためです。

以上のように、胃酸の出方一つでサプリメントの利用効率は激しく変化します。

なお、胃に重大な障害をもたらすピロリ菌感染については、下の利用阻害の項目で書くことにします。

itaru yoshida
ペプシノーゲンについてさらに詳しいことは、ペプシノーゲンを測ってみようをごらんください。

吸収阻害

腸の中でも小腸は、消化吸収に関わるポジションです。小腸から出る消化酵素だけでなく、膵臓から膵液が、胆嚢から胆汁もできてます。果たしてこれはきちんとした質のものが、適正な量でているのでしょうか?

たとえば胆汁が出ていなければ、脂物は消化吸収されません。これは同時にビタミンAやDなどの脂溶性ビタミンの吸収ができないことを意味します。胆汁の原材料はコレステロールなので、その量や利用量が低下していれば、いくらサプリメントを増やしても効果は頭打ちです。

また大腸では短鎖脂肪酸という食材を原料に、大腸で消費するエネルギー自体をそこで造っています。ここには乳酸菌やビフィズス菌といった良性細菌が必要で、実はビタミンB群の一部も産生してくれます。

さてこれらの調子が悪ければ、便通に問題が出てきます。すなわち下痢や便秘です。特に便秘がある方は、いくら栄養だけ入れても絶対にうまく行きません。食べたものが腸の中で腐敗し、炎症を助長し、腸のフィルターを壊して余計なもが体内に入ってしまうからです。これを俗に「腸漏れ」、正式には「腸管壁浸漏症候群=リーキーガットシンドローム」と言い、体調不良やアレルギーの大きな原因になっています。

私たちが採血と同時に食事記録と便記録を同時に提出してもらうのは、このようなことを事前に把握するためです。これらの診断が欠落していると栄養療法が効かないからです。

それから抗生物質やステロイドの使用歴が長い方は、腸内細菌のバランスが崩れ、腸漏れをおこしいる可能性は高くなります。

腸の状態を把握するにはCSA(便総合検査)が有効です。これにより、腸内細菌のバランス・消化不良の状態・腸の炎症・消化酵素の具合などが判定できます。栄養素としてサプリメントを摂る前に、乳酸菌製剤を使ったり腸管修復のためにグルタミンを使う方が結果が良いものです。

なお超漏れの大きな原因となっているカンジダ感染については、下の利用阻害の項目に書くことにします。

itaru yoshida
胃腸機能の改善策についてさらに詳しい情報は「胃腸が弱い方のための改善案」をごらんください。

利用阻害

栄養を積極的に入れているにも関わらず、それを邪魔するものがたくさんあります。これらの存在を無視していては、結果はなかなか現れません。

ピロリ菌

ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)は胃に住み着き、萎縮性胃炎を発生させ、胃酸の分泌量を著しく低下させます。また胃の表面の細胞のターンオーバー(置き換わり)やアポトーシスを阻害し、結果的に胃癌を発生させる問題の多い細菌です。

その存在は血液検査で容易に判定できるため、私たちのところでは初回の検査項目に必ず入っています。

ピロリ菌の存在が疑われた場合は、直ちに消化器内科への受診を強くお勧めしております。

一般的にはピロリ菌の除菌を行う事になりますが、強力な抗生物質を使わざるをえないので、腸内細菌を守るために乳酸菌製剤などの同時服用を考えてください。

なおタンパク質の代謝が悪い方は、ピロリ菌がいても検査で陰性になることがまれにあるそうなので、注意が必要です。

カンジダ

カンジダは酵母の仲間であるカビの一種で、常在菌と言って普段から腸内に生息しており、基本的には悪性の菌ではありません。

しかし生活習慣の悪化や糖分の過剰摂取で腸内細菌のバランスが崩れると、形態が変化し悪性化します。具体的には菌糸と呼ばれる根が生え、腸管にそのまま突き刺さり停滞します。こうなると腸の精密フィルターが破綻し、超漏れの大きな原因となります。

悪性化したカンジダは鉄分を奪ってエネルギー不足を助長したり、糖分を奪うので体の方が低血糖になりさらに糖分が食べたくなるという悪循環を繰り返します。

悪性化したカンジダが定着している状態でサプリメントを入れても、検査値はもちろん、疲れるなどの症状はなかなか改善しません

カンジダの検出には尿中有機酸検査が有効です。酒石酸・アラビノース・3−オキソグルタル酸の値が上昇している場合は、カンジダの増殖を強く疑います。

カンジダの除菌には糖質制限・乳酸菌製剤・バイオフィルム分解酵素剤・ナイスタチンなどを、専門家の指導の元に注意して行う必要があります。

水銀・鉛・カドミウムなどの重金属

栄養素を有効に使うためには、ミトコンドリア内でのエネルギー反応を滞りなく廻す必要があります。代表的なのは、中学校の理科で習うTCA回路(クエン酸回路・クレブス回路)という、目もくらむような面倒な経路です。一般生活には関係ないので覚えている人はいないと思いますが、コレです。倒れた人、いませんか?

私自身も、こんなものを覚えても何の役にもたたないだろうと思っていましたが、そんな事はありませんでした。栄養を理解するうえで、TCA回路はたいへん重要になってきます。この複雑な連鎖反応が1箇所でも滞れば代謝は低下し、疲れるとか治りが悪いとか不定愁訴を連発することになります。

この回路を円滑に廻すにはビタミンB群・鉄・亜鉛・マグネシウムなどが必須ですが、それを阻害してしまうのが水銀・鉛・カドミウムなどの重金属です。

特に水銀は非常によくある阻害物質で、マグロなどの大型魚にはかなりの量が含まれています。もっとも影響を強く受ける妊産婦には、厚生労働省から摂取制限が出されています

また、今はほとんど使われていませんが、ムシ歯の治療で詰めるアマルガムは水銀を含み持続的に揮発して行きますので、四六時中水銀を吸引していることになります。アマルガムの毒性は一般にはほとんど知られていませんが、私たちは積極的な除去をお勧めしています。ただし除去にあたっては安全防御や抗酸化を徹底した特別な環境で行わなくてはならず、安易な撤去は絶対に避けなくてはなりません

もちろん重金属の影響がでるのは、妊産婦に限った話ではありません。重金属はTCA回路以外にも代謝の様々な行程を阻害し、不定愁訴の大きな原因となります。重金属は栄養療法の盲点で、その蓄積状況や排泄障害の有無を事前に把握しておくことはとても重要です。

診断には毛髪ミネラル検査が有効であり、解毒にはメタロチオネインという重金属結合能タンパク質の発現をアップさせるために、亜鉛の積極摂取が有効です。

化学物質

最もやっかいなのが、化学物質かもしれません。感染や重金属に対処方法がある一方、化学物質の解毒はとても困難だからです。

農薬・食品添加剤・建材・廃棄物など、化学物質の暴露はたいへん多く、一部は発達障害や癌の原因となります。またTCAサイクルにもブレーキがかかりますので、解毒しないことには栄養補給だけでは解決しない難しさがあります。

これについてはまた稿を改めますが、とにかくできるだけ無用な化学物質には近づかず、体の排泄能力を常に正常に保つ事で、化学物質の本来の目的である利便性を安全に享受できるようになります。

消費過多

栄養は十分摂って、吸収能に問題がないと思うが、検査結果は改善しない… 一因は消費量が多くなっていることかもしれません。

たとえば現代人は、対人ストレスなどでビタミンCの消費は激しいでしょう。

お酒を呑めば、アルコールの解毒で亜鉛やマグネシウム・ビタミンB群の消費や排泄は亢進します。

ご飯・パン・麺・砂糖が多い人は、糖分を代謝するのにビタミンB1を大量に消費します。

それから消費ではないのですが、遺伝的にビタミンB6と亜鉛が排泄が過剰になってしまう体質の方がおられます。これをピロルリア(ピロール異常)といい、特殊な検査をしないと判別できません。ビタミンB6や亜鉛をいくら摂ってもALPやALT(GOT)が改善しない場合は、その可能性を疑ったほうが良いでしょう。

ストレス過剰

ストレスは昔から誰もが持っていたことですが、今のストレスは昔はなかった対人関係のジワジワ来る様ないやらしいストレスです。戦争など生死に関わる様なストレスとは、体の反応はだいぶ異なるようです。

生体は「交感神経」と「副交感神経」という二つの経路の自立神経でバランスをとっています。交感神経は興奮状態、副交感神経はリラックス状態を誘導します。

実は胃腸は副交感神経で働きます。したがって急いで食事をしたり、ストレスがある状況での食事は、副交感神経が働いていいませんから、そのまま消化不良になります。結果、良い食材もサプリメントもたいして効かないことになります。

緊張状態が続けば活性酸素がどんどん発生し、その消滅のためにビタミンCやE・グルタチオン・メタロチオネインなどの抗酸化物質がどんどん消費されます。

また副腎というストレスに対抗するホルモンが枯渇し、副腎疲労という強い疲労倦怠がでます。これをカフェインでごまかしているのが、よくある状態です。

したがってストレスマネジメントは、栄養療法ではたいへん大きな意味を持ちます。ある程度のストレスは生きている以上しかたがないことですが、それをどう解消するか、心の持ちかた一つでサプリメントは効き目が大きく変わります。マインドフルネスやヨガが注目されているのは、そのためです。

それ以外にも普段とは違う事をやることで、いつもとは違う部分の脳を動かす事は、栄養療法的にみてもたいへん重要です。

現代社会は、ストレスを飲食で解消する文化が根付いています。その飲食が間違っているために、ストレスによる悪影響はさらに大きなものとなって襲ってきます。

ですから飲食以外のストレス解消法を持つ事は、たいへん重要です。もちろん正しい飲食を継続することが大前提であることは言うまでもありません。

itaru yoshida
いかがだったでしょう?栄養の効果を阻害する原因には、実に多くのものがあることに驚いたのではないでしょうか。ただサプリメントを増量しても、期待する効果は出にくいこともお解りいただけたと思います。

阻害因子を少しずつ削減することで、あなたの健康はまるで違うものになります。ぜひ一つずつ消して行くようにしましょう。







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